こんにちは!r-youngです☺️
今回は前回の続き、ICU退室までの全身管理についてです!
循環、呼吸、腎・電解質以外のポイントをまとめてみます📚
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消化管・栄養の管理
心臓血管手術後の患者さんの回復プロセスにおいて、適切な栄養管理は極めて重要です。特に、早期からの腸管栄養の開始は、患者の回復を促進する上で推奨されていますが、その際にはいくつかの懸念事項が存在します。
栄養開始の原則
- 重症患者ほど、早期に腸管を使用した栄養開始が推奨されています。これは、腸管栄養が免疫機能の維持や腸内細菌叢の正常化に寄与し、感染症のリスクを低減させるためです。
- 早期腸管栄養は、術後の合併症の発生率を下げ、病院滞在期間の短縮にも関連しています。
腸管使用に際しての懸念事項
腸管虚血
- 腸管虚血は、血液供給の不足により腸管組織が損傷を受ける状態を指します。心臓血管手術後は、特に血流動態が不安定な患者さんで発生するリスクがあります。
消化管蠕動障害
- 手術後、特に腹部手術を受けた患者さんにおいて、消化管の運動機能が一時的に低下することがあります。これは、手術による物理的な操作や、術後の炎症反応によって引き起こされることが多いです。
カテコラミンの使用
- 高用量のカテコラミン使用は、血管収縮を介して腸管虚血や消化管動態障害のリスクを高めることがあります。カテコラミンを要する病態自体が、既に腸管の血流不足を示唆している場合もあります。
特定の手術症例
- 腹部分枝のmal-perfusionを伴う大動脈解離や大動脈瘤破裂、腹部大動脈ステントグラフト内挿術などは、腸管虚血や消化管蠕動障害のリスクが高い手術とされています。これらの症例では、執刀医との密接な協議が必要となります。
管理戦略
- リスク評価:患者さんごとに腸管虚血や消化管蠕動障害のリスクを評価し、栄養開始のタイミングと方法を慎重に決定する必要があります。
- 段階的開始:腸管栄養を開始する際は、小量から始めて徐々に量を増やしていくことで、消化管の耐容性を評価します。特別な問題がなければPOD 1から経口での食事は開始できます。
- モニタリング:腸管栄養開始後は、腹痛、膨満感、嘔吐、下痢などの症状の有無を注意深くモニタリングし、消化管蠕動障害や腸管虚血の兆候を早期に捉える必要があります。
- 多職種チームによる管理:栄養士、医師、看護師など、多職種チームによる綿密な連携とコミュニケーションが、適切な栄養管理を実現する上で重要です。
- 内服開始:早期の腸管使用は栄養のみならず、薬剤投与においても重要な意味を持ちます。栄養開始に際しての懸念がある場合でも、内服薬の投与は比較的安全に開始できることが多く、早期の経口投与への移行は患者の回復を促進する上で推奨されます。
心臓血管手術後の患者さんにおける消化管・栄養の管理は、患者さんの回復を支える基盤となります。早期腸管栄養の開始は多くのメリットをもたらしますが、その際には腸管虚血や消化管蠕動障害のリスクを考慮し、慎重な介入が求められます。
内分泌管理:血糖管理の戦略
心臓血管手術後の患者さんにおける血糖管理は、手術後の回復プロセスにおいて重要な要素の一つです。適切な血糖コントロールは、感染リスクの低減、傷の治癒促進、全体的な回復の加速に寄与します。食事の開始と共に、血糖管理の方法も適宜調整する必要があります。
食事開始直後の血糖管理
- 調節性のよいインスリンの使用: 食事開始直後は、食事量が不安定なため、血糖値も変動しやすくなります。この期間は、インスリンを使用して血糖コントロールを行います。
- インスリン投与方法の変更: 経口摂取が開始されると、血糖の推移に変化が見られるため、インスリンの持続投与から食事直前の皮下注射への変更を検討します。この変更は、食事による血糖値の上昇に対してより効果的に対応するためです。
注意点
- 低血糖のリスクに注意: 血糖管理においては、高血糖のみならず、低血糖のリスクにも注意を払う必要があります。特にインスリン療法の変更期間中は、低血糖になりやすいため、患者さんの症状に注意を払い、適切な教育とモニタリングを行うことが重要です。
- 多職種チームによる協力: 血糖管理は、医師、看護師、栄養士、薬剤師など、多職種チームによる協力の下で行うことが最も効果的です。患者さんの食事計画、インスリン療法、血糖モニタリングを一貫して管理し、患者さんの回復をサポートします。
心臓血管手術後の患者さんにおける血糖管理は、食事の開始と共に適切に調整されるべきです。調節性のよいインスリンの使用と、経口摂取開始後のインスリン投与方法の変更により、患者さんの血糖値を効果的にコントロールすることが可能になります。患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別化されたアプローチが、最適な血糖管理を実現します。
ドレーン管理
心臓血管手術後のドレーン管理は、術後回復の重要な側面の一つです。
適切なタイミングでのドレーン抜去は、
感染リスクの低減、
患者の快適性向上、
リハビリテーションの促進
に寄与します。ドレーン抜去の判断は、一連の客観的指標と患者の臨床状態を総合的に評価することに基づきます。
ドレーン抜去の一般的な指標
- 液体の量と性状: 心囊で1日あたり約100ml、胸腔(片方)で1日あたり約200mlの液体産生は、正常でも起こりうる範囲です。液体の性状や色調も重要な指標となり、これらが安定している場合にはドレーン抜去を検討します。
- 出血量のトレンド: 出血量の増減トレンドを観察し、出血が安定している、または減少傾向にある場合にドレーンを抜去することが一般的です。
- 性状の変化: ドレーンからの排液の性状変化は、合併症の早期発見に役立ちます。例えば、排液が突然濁ったり、色が変わったりする場合は、感染や内出血の可能性を考慮する必要があります。
- 画像診断: 胸部X線やエコーなどの画像診断を用いて、液体の貯留やその他の合併症の有無を評価します。これらの検査結果もドレーン抜去のタイミングを決定する際の重要な要素です。
ドレーン留置のメリットとデメリット
- メリット: ドレーン留置は、術後の出血や液体貯留を管理し、合併症のリスクを低減する目的があります。
- デメリット: 一方で、長期間のドレーン留置は疼痛を引き起こしたり、患者の動きを制限しリハビリテーションを妨げたりする可能性があります。また、感染源ともなり得ます。
抜去の判断と協議
- 継続的な評価: 術後の経過を鑑みながら、執刀医と共にドレーンの留置継続の是非について連日協議します。このプロセスは、患者の安全を最優先に考え、可能な限り迅速な回復と患者の快適性を確保するために重要です。
心臓血管手術後のドレーン管理において、抜去のタイミングは患者の安全と快適性を確保するために慎重に検討されます。
液体の量や性状
出血量のトレンド
画像診断の結果
など、複数の指標を総合的に評価し、多職種チームでの協議を通じて最適な判断を行うことが、患者さんの最良の結果を得るために不可欠です。
感染管理
心臓血管手術後の感染管理は、患者の回復過程において極めて重要な役割を果たします。
術後の炎症反応のモニタリングは、合併症の早期発見と介入に不可欠です。
炎症反応の通常の経過
- 炎症反応のピーク: 手術による侵襲は、自然な炎症反応を引き起こします。この反応は、通常、手術後3日目程度でピークに達し、その後は徐々に改善していくことが期待されます。
- 発熱の観察: 術後の発熱も、炎症反応の一部として現れることがあります。この発熱は、術後数日以内に改善するのが一般的です。
炎症反応の異常な持続や再上昇
- 持続する炎症反応: 術後数日を超えて炎症反応が持続する場合や、一度改善傾向にあった炎症反応が再び悪化する場合は、何らかの合併症が発生している可能性があります。
- 合併症の可能性: このような状況では、手術部位感染(SSI)、肺炎、尿路感染症、血流感染症など、様々な感染症合併症の可能性を考慮に入れる必要があります。
合併症の診断と対応
- 全身の診察: 炎症反応の異常な持続や増悪が観察された場合は、全身の詳細な診察を行い、感染の兆候や他の合併症のサインを探します。
- 追加的検査: 血液検査(CRP、白血球数、プロカルシトニン)、画像診断(X線、CT)、微生物学的検査(血液培養、傷部位の培養)など、必要に応じて追加的な検査を実施して原因を特定します。
- 治療の開始: 合併症の原因が特定された場合は、迅速に適切な治療を開始します。これには、抗菌薬の使用、対症療法などが含まれる場合があります。
心臓血管手術後の感染管理においては、炎症反応の適切なモニタリングと評価が重要です。炎症反応の異常な持続や増悪は、合併症の存在を示唆する可能性があり、早期の診断と介入が患者の回復と予後に大きな影響を与えます。医療チームは、炎症反応の変化に注意を払い、必要に応じて迅速に対応する必要があります。
まとめ
いかがでしょう?
心臓血管外科術後はr-youngの施設では、通常の経過を辿れば2−3日で一般病棟へ移動します。
ICUでは循環・呼吸状態を安定化させつつ、水分出納バランスの調整(主に利尿薬によるdry sideへの誘導強化)、早期離床、経口摂取の開始、内服薬への移行、ドレン・点滴などデバイス類の整理などを病棟移行を視野に入れて進めていく必要があります。
治療を進めていく過程では、多職種の協力が欠かせません。
NPの役割は他職種の連携を統括する、重要な役割を担います。
医学的臨床推論と診察技術をベースに各医療者、そして患者と協議しながら病棟への移行に向けたケア介入を行なっていくのです。
また次回!
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