POD1〜ICU退室まで① 利尿期キタ〜‼️🎊

周術期管理

こんにちはr-youngです‼️

今日は術翌日からICU退室に向けたアプローチをまとめてみました。

循環・呼吸・腎・電解質のアプローチとアセスメントを一緒に考えていきましょう📖📚

それでは、行ってみよう!🚗💨

循環管理

利尿期へのアプローチ

心臓血管外科手術後の患者さんは、手術中に投与された輸液や血液製剤により、体内に過剰な水分が存在(volume over)することが一般的です。体重の増加として数kgの増加を見ることがありますが、本格的な利尿期となると、血管内に体液が戻ってきて血管内ボリュームが満ちてきます。

特に手術後初日(POD1)から退院に至るまでの期間においては、この過剰な水分を効率的に体外に排出することが、患者さんの回復にとって非常に重要です

利尿期の管理と戦略

モニタリングと評価

  • バイタルサイン、循環系モニタリング、心臓エコーなどを用いて、体内の水分状態と臓器への血流(灌流)を評価します。
  • 体液過剰の兆候(体うっ血)と臓器への血流不足を識別し、これらの情報をもとに利尿治療の必要性を判断します。

積極的な利尿の実施

  • ICUでは、持続輸液や薬剤による意図しない水分の増加が見られるため、利尿薬の投与だけに頼ると水分バランスの管理が困難になることがあります。
  • 1日の利尿量の目標を設定し、その目標を達成するために数時間ごとに利尿薬の適切な量を投与します。

利尿薬の適切な使用

  • 患者さんの状態に応じて、ループ利尿薬やアルドステロン拮抗薬など、さまざまな利尿薬を選択します。
  • 体液バランスや電解質バランスに注意を払いながら、必要に応じて利尿薬の種類や投与量を調整します。

注意点

  • 利尿治療を進める際には、過剰な利尿が臓器の灌流不足を引き起こさないように注意が必要です(引き過ぎ要注意‼️)。特に腎機能への影響には細心の注意を払う必要があります。
  • 利尿薬の使用は、患者さんの全体的な状態、特に心機能と腎機能に基づいて慎重に行われるべきです。

手術後の利尿期における循環管理は、患者さんの回復と早期の退院を目指す上で重要な役割を果たします。適切なモニタリングと利尿薬の使用により、体液過剰の解消と臓器の適切な灌流を確保することが、この期間の管理の鍵となります。

術後心房細動(POAF)の管理について

術後心房細動(Post-Operative Atrial Fibrillation, POAF)は、心臓血管手術後に最も一般的に発生する合併症の一つであり、特に心臓手術後の48~72時間の間に発症のピークを迎えます。この時期の適切な管理は、術後の合併症を最小限に抑え、患者の回復を早めるために重要です。

POAFの疫学と重要性

  • POAFは、術後の患者さんにおいて、長期的な転帰を悪化させる可能性があるため、その発生には特に注意が必要です。
  • 発症すると、脳卒中や心不全のリスクが高まり、病院滞在期間の延長や治療費の増加につながる可能性があります。

管理戦略

リスクの評価と予防

術前にPOAFのリスク因子を評価し、可能であれば、β遮断薬やアミオダロンなどによる予防的治療を検討します。

リスク因子

①カテコラミン投与

②僧帽弁置換

③左房拡大

④術後のβ断薬の中断

⑤低カリウム・低マグネシウム血症

⑥容量負荷

早期発見とモニタリング

  • 術後は定期的な心電図モニタリングを行い、POAFの早期発見に努めます。
  • 術後48~72時間のピーク期間には特に注意深くモニタリングすることが重要です。

抗凝固療法

  • POAFが確認された場合、血栓形成予防のため抗凝固療法を開始することが一般的です。
  • 患者の出血リスクを評価し、適切な抗凝固薬を選択します。

心房細動のコントロール

  • レートコントロール(β遮断薬やカルシウムチャネル遮断薬の使用)とリズムコントロール(電気的カルディオバージョンや抗不整脈薬の使用)の両方の戦略があります。
  • 患者の症状、合併症のリスク、および全体的な健康状態に基づいて、最適なアプローチを選択します。

注意点

  • POAFの管理にあたっては、患者ごとの総合的な評価が必要です。特に、抗凝固療法を開始する際には、出血リスクと脳卒中リスクのバランスを慎重に考慮する必要があります。
  • POAFは多くの場合、適切な管理により長期的な影響を最小限に抑えることが可能です。

POAFは、心臓血管手術後において重要な合併症です。その予防と管理は、術後の患者さんの安全と回復を確保するために不可欠です。予防策の実施、早期発見と適切な治療の提供、そして患者さんの継続的なモニタリングが、成功への鍵を握ります。

病棟移行における管理調整:降圧目標、薬剤、およびモニタリング装置の調整

心臓血管外科手術後の患者さんの病棟移行においては、術後の安定期に入るにつれて、緊密な監視と管理からより標準的な病棟ケアへと移行する必要があります。この過程で、降圧目標の調整、薬剤の管理、そしてカテーテルやモニタリング装置の調整が重要な役割を果たします。

降圧目標の調整

  • 術後直後は、血圧管理を含む循環管理が非常に重要です。しかし、患者さんが安定してきたら、術者と協議のうえで降圧目標を緩和し、内服薬による血圧管理へと移行していきます。
  • 患者さんの状態や手術後の合併症のリスクに応じて、個別に降圧目標を設定し直します。

薬剤の調整

  • 利尿期の管理や電解質のバランスを考慮し、必要に応じて薬剤の調整を行います。特に、利尿が促進されると電解質の不均衡が生じることがありますが、それらも内服薬での補正に切り替えます。
  • 多量の薬剤や持続投与薬を段階的に減らし、可能な限り内服薬へと切り替えていきます。これにより、患者さんの自立を促進し、退院後の管理を容易にします。

カテーテル・モニターの調整

  • 術後の管理が安定してくると、中心静脈カテーテルのような侵襲的デバイスを段階的に減らし、最終的には抜去します。
  • 動脈圧ラインは、電解質の頻回な採血が必要な場合に残しておくことがありますが、病棟への移行時には抜去するのが一般的です。

注意点

  • すべての調整は、患者さんの状態を慎重に評価し、多職種チームでの協議を経て行われるべきです。特に、薬剤の調整やモニタリング装置の抜去は、患者さんの安全を最優先に考慮する必要があります。
  • この移行プロセスは、患者さんを病棟ケアへとスムーズに移行させるためのものであり、その過程で患者さんの自立と回復を促進することが目的です。

心臓血管外科手術後の患者さんの病棟移行に際しては、降圧目標の適切な調整、薬剤の管理、およびモニタリング装置の段階的な減少が、患者さんの安定と回復を促進する鍵となります。チームでの協議と患者さんの状態に応じた柔軟な対応が求められます。

呼吸管理

心臓血管手術後の患者さんにおける呼吸管理は、手術後の回復過程で非常に重要な要素です。術後の利尿期や無気肺による酸素化不良は、しばしば見られる合併症であり、これらに対する適切な介入が必要となります。

利尿期による呼吸状態の改善

  • 利尿期における積極的な利尿治療は、うっ血性心不全による肺うっ血や、その結果としての酸素化不良に対して非常に効果的です。
  • 利尿により余分な水分が体外に排出されることで、肺のうっ血が軽減され、ガス交換が改善していきます。

リハビリテーションの役割

  • 早期からのリハビリテーション介入は、無気肺の予防および改善に寄与します。特に、呼吸器リハビリテーションは、肺機能の回復を促進し、酸素化の改善につながります。
  • 早期離床、咳嗽法などが有効です。これらの訓練は、呼吸筋の強化、気道のクリアランスの改善、および全体的な呼吸機能の向上を目的としています。

酸素療法のテーパリング

  • 患者さんの呼吸状態が安定してきたら、酸素療法の量を徐々に減らしていくテーパリングを行います。このプロセスは、血液ガス分析やパルスオキシメトリーによる定期的な酸素飽和度のモニタリングを通じて、患者さんの酸素化状態を評価しながら進められます
  • 酸素投与の減量は患者さんの容態が許す範囲で行われ、呼吸状態が十分に安定していることを確認した上で実施されます。

VAP(人工呼吸器関連肺炎)とHAP(院内肺炎)の警戒

  • 利尿やリハビリによる介入で呼吸状態が改善しない場合、または喀痰の性状変化や反跳性の炎症反応増加が見られる場合は、VAPやHAPの可能性を疑います。
  • これらの病態は、院内での感染症合併症として重要であり、早期に適切な診断と治療を開始することが、患者さんの予後に大きく影響します。
  • VAPやHAPの疑いがある場合、培養検査を含む詳細な診断評価と、早期の抗菌薬治療が必要になります。
  • まずは経験的治療(広域抗菌薬)から開始し、培養結果が確認できれば最適化治療(de-escalation)を行います。

心臓血管手術後の患者さんにおける呼吸管理は、積極的な利尿治療、リハビリテーション介入、適切な酸素療法の管理、そして感染症合併症の早期発見と治療によって支えられます。これらの取り組みを通じて、患者さんの呼吸状態の安定化と改善を目指し、退院への道をスムーズにすることが目標です。

腎・電解質管理

心臓血管手術後の患者さんでは、利尿期に入ると共に、電解質のバランスが乱れることが一般的です。この期間に適切な電解質補正と腎機能の管理を行うことは、患者さんの全体的な回復と安定化に不可欠です。

電解質補正のアプローチ

  • 利尿期には、ナトリウムカリウムカルシウムマグネシウムといった主要な電解質の不均衡が生じやすくなります。
  • 血液検査による定期的な電解質モニタリングを行い、異常値を示す場合は、積極的に補正を行います。一般病棟への移行を考慮すると、経口の電解質の補給が一般的です。
  • 電解質の管理は、心機能、神経機能、筋機能など、患者さんの体内の多くの重要なプロセスに影響を与えるため、特に注意を要します。

急性腎障害(AKI)の管理

  • AKIは、手術後の合併症としても知られており、腎灌流の低下腎うっ血によって発生する可能性があります。
  • AKIの場合、患者さんの尿量が減少し、利尿が困難になることがあります。このような状況では、腎代替療法(CRRT)の利用を検討することがあります。CRRTは、腎うっ血を解除し、腎機能の改善を支援することができます。
  • さらに、抗菌薬を含む使用している薬剤の見直しを行い、腎障害の原因となる可能性がある薬剤を中止します。これにより、腎機能への負担を軽減し、回復を促進させることが目的です。

注意点

  • 腎・電解質管理においては、患者さん一人ひとりの状態に合わせた個別のアプローチが必要です。特に電解質の補正には、過剰または不足による合併症を避けるため、細心の注意を払う必要があります。
  • AKIの管理においては、早期発見と迅速な介入が重要です。適切な薬剤の使用と、必要に応じてCRRTなどの腎代替療法を検討することが、患者さんの腎機能の保護と回復に寄与します。

心臓血管手術後の腎・電解質管理は、患者さんの回復過程で極めて重要な役割を担います。利尿期における電解質の異常を適切に管理し、AKIの予防と治療に努めることで、患者さんの全体的な安定化と回復を促進させることができます。

まとめ

いかがでしたか?

術直後の、循環呼吸状態が不安定な状況を脱した後はいかに安定して状態で早期にICUを退室していくか?という点に重点を置いた管理が必要となります。

利尿期をしっかりと見極めて、適切な段階で水分出納バランスを整える。それが循環・呼吸・腎・電解質管理に重要なことだと日々感じております。

術翌日以降も急変リスクや合併症リスクはまだまだ高いです!以上の早期発見には細心の注意を払うことも大事なポイントですよね🧐

次回も続きます。

ではまた❗️👋

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