どーもr-youngです!
前回に引き続き
「心臓血管外科術後管理シリーズ」をやっていきます👍
今回は「ICU入室時の初期対応」です!
ICU(集中治療室)への患者の入室時は、その後の治療成績に大きく影響するため、迅速かつ的確な対応が求められます。以下は、心臓血管外科ナースがICU入室時に最初に行うべきプロセスの概要です。
それでは、行ってみよー!💨
モニターの装着と末梢循環の確認
モニター装着
- 血圧測定:動脈ライン(A-line)を使用した観血的血圧測定と非観血的血圧(NIBP)測定の両方を準備します。A-lineは、特に血圧の急激な変動が予想される場合や、正確な血圧管理が必要な場合に有効です。しかし、A-lineはオーバーシュートや屈曲などにより正確な値ではない可能性もあるのでNIBPとの比較が大切です。左右両方で血圧測定を行えば左右差の有無も評価できますね!
- 心電図(ECG)モニター:心電図モニターを装着し、心拍数、リズム、その他の心電図パラメーターを監視します。
- SpO2モニター:酸素飽和度を監視するために、パルスオキシメーターを指や耳たぶに装着します。これにより、患者の酸素供給状態を継続的に評価できます。
循環の確認
- 聴診:心音と呼吸音を聴診し、異常がないか確認します。これは、心機能や呼吸状態の基本的な評価を提供します。
- 末梢皮膚温:触診による末梢皮膚温の確認は、末梢血管抵抗と循環状態の大まかな評価ができ簡易的で有用です!冷たく、湿った皮膚は循環不全の徴候でもあるので注意が必要です!
ICU入室後のドレーン管理と呼吸器接続
ICUに入室した心臓血管外科患者の管理において、ドレーン管理と呼吸器への接続は、患者の安定と回復に不可欠な手順です。これらの手順は、患者の状態を監視し、合併症を予防するために重要です。
ドレーン管理
- Water Shieldの確認と吸引の開始:患者の移動中はドレーンがwater shieldとなっています。ICUに入室したら、吸引管をドレーンに接続し、適切な陰圧をかけます。これにより、体内からの液体(血液やその他の体液)の除去が効率的に行われます。
- 出血量の確認:ドレーンを通じて排出される液体の量と性質を定期的に確認します。出血量の監視は、患者の出血傾向やその他の合併症の早期発見に役立ちます。
- ミルキング:ミルキングには賛否両論あります。ミルキングによる過度の吸引圧が組織損傷を起こすリスクもある一方で、ドレーン閉塞による胸水貯留や心タンポナーデを引き起こす危険性もあります。重要なのはドレン閉塞による有害事象を防ぐことです。
呼吸器への接続
- FiO2(吸入酸素濃度)の設定:患者の酸素需要に応じて、FiO2を調整します。これは、血中酸素濃度を適切なレベルに保ち、酸素化を最適化するために重要です。
- 一回換気量と回数の設定:適切な換気量と呼吸回数を設定することで、患者の換気状態を最適化します。
- PEEP(陽圧終末呼気圧)の調整:PEEPの適切な設定は、肺の適切な拡張を維持し、酸素化能を保つために重要です。
- アラームの設定:呼吸器のアラーム設定を確認し、患者の呼吸状態に異常が生じた場合に速やかに対応できるようにします。患者毎にアラーム設定はカスタマイズする必要があります。
重要性と注意点
ドレーン管理と呼吸器への接続は、術後の心臓血管外科患者の安全と回復を確保するために欠かせません。これらの手順を適切に実施することで、合併症のリスクを減少させ、患者の予後を改善することができます。NPはこれらの手順を熟知し、患者の状態に応じて迅速かつ正確に対応する必要があります。
これらの管理手順により、心臓血管外科NPはICUでの患者ケアの質を高め、より良い治療成績を目指すことができます。
点滴ラインの整理
ICU入室後の患者管理において、点滴ラインの整理は、患者の安定性を確保し、適切な治療方針を立てる上で不可欠です。
ICUに到着した患者の点滴ラインは、移動中に絡み合ったり、薬剤の中断や急速注入のリスクがあります。これらは患者の安全に直接影響するため、迅速な整理と確認が必要です。
手順
- 点滴ラインの確認と整理: すべての点滴ラインを丁寧に確認し、必要な薬剤が適切に注入されているかを確認します。ラインが絡まないように整理し、今後の管理を容易にします。
- カテコラミンなどの重要な薬剤ラインの扱い: 循環動態に影響を与える可能性のあるライン、特にカテコラミンや血管拡張薬を含む重要な薬剤ラインは慎重に扱います。必要に応じて再接続することもありますが、循環動態に悪影響を及ぼさないよう最大限の注意を払います。
採血・検査
初期検査の重要性
ICU入室直後に行う検査は、患者の現在の状態を評価し、治療計画を立てるための基礎情報を提供するため、とても重要です!
- 動脈血ガス分析(ABG): 酸素化、二酸化炭素排出能力(ガス交換能)、酸塩基平衡、循環動態を評価します。
- 血算、生化学、凝固検査、ACT(活性化凝固時間): 患者の全身状態、臓器機能、血液凝固能を評価します。
- 12誘導心電図: 心臓の電気活動を詳細に評価し、不整脈や虚血の有無を確認します。
- 胸腹部X線: 肺の状態、胸水の有無、チューブやデバイスの位置確認など、呼吸器系および腹部の評価に使用します。
その他の情報の確認
ICU入室時に心臓血管外科NPが行うべきその他の重要な情報の確認は、患者の全体的な状態を把握し、適切な治療計画を立てるために不可欠です。以下の情報は、患者管理の効果を最大化するために詳細に検討する必要があります。
尿量と尿の性状
- 尿量のモニタリングは腎機能と体内の液体バランスを評価する重要な指標です。正常な尿量は成人で毎時0.5ml/kg程度が目安です。
- 尿の性状(色、透明度、存在する可能性のある沈殿物)も重要で、脱水状態、感染、出血などの問題を示唆する場合があります。
体温
- 体温のモニタリングは、感染や炎症の有無、体温調節の問題を識別するために必要です。高熱は感染や炎症反応を、低体温は循環不全や代謝の低下を示すことがあります。
中心静脈圧(CVP)と心拍出量
- CVPの測定は、心機能と血液容積状態を反映し、適切な輸液管理の指標となります。
- 心拍出量の測定は心機能の評価に重要で、心不全やショックの管理に不可欠です。
手術中の水分出納、輸血量、最終Hb、筋弛緩薬等の量
- 手術中の水分バランス、輸血量、最終的なヘモグロビン(Hb)濃度の確認は、患者の血液状態と体内の液体バランスを理解するために重要です。
- 使用された筋弛緩薬の種類と量も、麻酔からの回復を管理する上で重要な情報です。
人工心肺時間、大動脈遮断時間
- 人工心肺を使用した時間と大動脈遮断時間の確認は、心臓手術の重要なパラメータであり、術後の患者管理におけるリスク評価に役立ちます。
まとめ
いかがでしょう?
ICU到着直後における心臓血管外科患者のケアは、多職種協働によるチームアプローチが不可欠です。心臓血管外科医師、麻酔科医師、臨床工学技士(ME)、ICUスタッフ、そしてNPなど、各専門家が協力して患者の初期治療と管理の準備を行います。この協働は、患者の安全を確保し、最適な治療成績を達成するために重要です。
次回もICU術後管理について、より具体的にまとめていきたいと思います!
それではまた次回!👋
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